最近日本では飲酒運転と公務員のコンボで叩くのがマスコミで人気のようですね。なので今日は飲酒運転について。

アメリカでは飲酒運転、具体的にはDUI(driving under influence)の状態で警察につかまるとその場で現行犯逮捕され、監獄にいれられます。また4回飲酒運転でつかまると殺人罪と同様の罪が課せられます。飲酒運転で悪質な死亡事故をおこした場合は州によっても異なりますが、殺人と同様の罪にとわれます。このように日本に比べて厳しい処罰となっています。


ところが上記のような情報を踏まえてこちらにきて、さぞかし誰もお酒をのんで運転なぞしないのだろうと思っていると、なんとこちらではかなりの数のひとが飲酒運転しています。アルコールの出る公の集まりですらみんな車で帰っています(みんなというのは語弊がありますが、みたかぎりかなり多くのひとが)。飲酒、アルコール規制にきびしいアメリカ人がなぜこのように飲酒運転するのか?を考えてみました。


日本のアメリカの事情の違い

1)交通手段のちがい
街全体がコンパクトな日本では歩いてコンビニに行ったり、チャリでちょっと買い物ができますがアメリカでは車でしばらく走らないとどこにもいけません。公共交通機関は発達しておらず、なにをするにも自家用車です。タクシーも街中以外ではつかまりません。それに自転車やバイクや歩行者といったものがほとんどいません(移動手段として貧弱あるいは危険で使えないからです。軽自動車さえありません。)したがってみんな車で移動。事故も車と車です。


2)道路状況の違い
アメリカの道路は日本に比べて一般的に広く、対向車線が完全に分離帯で分かれている道が多いように感じます。また交差点が圧倒的に少なく、信号で止まることもすくないです。

1)とあわせて交差点で歩行者や自転車を巻き込む事故がまずありません。アメリカ人の運転は非常に荒く、へたくそです。にもかかわらず、すごく飛ばします。日本ならまずすぐに事故につながるような運転ですが、それでも何とかなるのはこのような理由によります。


3)飲み会のあり方の違
日本でお酒のでる夜の集まりといえば居酒屋などイスに座る、あるいは座敷でくつろいで本格的に飲むことが多い。その点こちらでは立食パーティーなどで立ったままグラス片手に談笑が基本です。つまり日本では泥酔になりやすく、アメリカではなりにくいといえます。
レストラン等では食事がメインであり、飲み物は食前酒としてたしなむ程度。また食事の量が膨大でそれだけで腹が膨らむので飲む過ぎになりにくい。バーは別として日本の居酒屋のように酒を飲むために特化したつまみメニューをおいている店はありません。


4)酔い方のちがい
サラリーマンのおじさんや若者が駅のホームで酔っ払って寝ていたり、ゲロ吐いたり、千鳥足であるいたり、日本の繁華街では週末の夜になるとこのような酔っ払いをよく見かけますが、こちらではまったく見かけません。酒に対する民族的な強さの違いもありますが日本人は無防備に酔いすぎです。こちらでそんな状態だと身包みはがされるか、警察に連れて行かれます。


5)検問
アメリカは自己責任の国なので酔って運転して事故を起こした場合は重い罪がかせられますが、日本のようにいちいち渋滞まで起こして飲酒の検問などしません(注)。ただし蛇行運転など見た目に危ない運転をしていればすぐにつかまります。したがって飲んで運転する人は必要以上に慎重に制限速度を守って安全運転するそうです。金曜の夜なぞはそんな感じの車が多い。
(注:ハワイではやってました。州によって違うようです)


以上まとめるとアメリカ人に飲酒運転が多い理由としては、
・車にのらないとどこにも行けない。
・飲み会でもそこまで酔っ払わない。
・酔って注意力が落ちることで危険性がます交差点での事故がすくない。
・飲酒検問がない

           などがあげられます。


両国の取り締まりのあり方の違いをみていると日本ではとにかく一滴でも飲んだらだめの方向ですべて厳しくとりしまろうとしていますが、アメリカでは事故を起こさないように自己責任で飲めという印象をもちます。(もちろん飲んで運転していいなんて公言していませんが。)
悪いのは酒を飲んで運転すること自体ではなく、事故をおこす事という認識なのだと思います。アメリカが飲酒運転と定めている血中アルコール濃度0.08%というのはかなり高い濃度です。ビール一本程度なら事実上OKなわけです。
日本では酒気おび運転の定義が呼気中アルコール0.15mg以下にさらに厳しくなりました。つまりちょっとでも飲んだらだめの方向に押し進んでいるわけです。


なにが言いたいかというと、事をおこせば厳しく対処するがそこまで取り締まりはしないアメリカにくらべ、ひたすら取り締まりを厳しくする方向にすすむ日本に個人責任に対する考え方の違いを感じたわけです。

その他の犯罪にしてもそうですが、最近の日本人には程度がわからない、自己をコントロールできない人間が増えているように思います。だから行政やシステム側にすべてを規制してもらわないといけないのでしょうね。規制されると安心する、逆に責任をそちらに丸なげしているようにもとれます。


一般に規制の強化は一定の効果はあっても本質的な解決ではありません。きたないものの出口をより強く縛っているだけです。逃げ道から噴出すか、爆発します。なぜ汚いものが作られるのかの原因解決になりません。


大事なことはアルコールに対する理解を徹底させること。個人のモラルや自己管理の能力の養成するために具体的な方法をとること。アルコール依存と自覚していない人間にそれを自覚させ治療することが大事ではないでしょうか?意識がなくなるまで飲むという日本の飲酒習慣は完全にアルコール中毒です。


たとえが悪いかもしれませんが、アメリカのスーパーでは賞味期限ぎれの食品やすでに傷んだ野菜など平気で店頭にならんでいます。日本なら客が目を吊り上げて店に文句をいうところですが、こちらではそれを選んで買う客のほうが悪いという発想になります。
厳しく規制してもらわなくとも個人が自分で判断し、行動に責任をもてるような世の中になればいいと思います。


(この文章では酒気おび運転と酒酔い運転を区別せずにかいていますが、本来この二つに境界なんかはありません。酒を飲めば多かれ少なかれ身体能力に影響がでます。適当な主観的判断で区別するのはどうかとおもいます。)